【備忘録】中和点でのpHは必ず7になるとは限らない理由

【20220123投稿】
【20220123修正】
- コピペしてたのがバレました。詳細は Twitter で載せています。
【20220124修正】
- 普通気付くやろっていう誤字を修正しました。
- 不要な爪楊枝を読点で取り除きました。
- 微妙に見やすくしました。

【20220414修正】
- 教科書と同じように,化学式をサンセリフ( $\textsf{Computer Modern Sans Serif}$ )にしました。



内容が間違っていれば Twitterまでお願いします。僕の身にも,これを閲覧する人(なんて居るのだろうか)の身にもなります。

[:contents]

月 曜日1限の授業は眠い

半分寝ながら化学の授業を受けていたので,「中和点の $\mathrm{pH}$ が必ず $7$ になるとは限らない」と言われ,what? となったまま授業が終わったのですが,後日調べてやっとすっきりしました。





めでたしめでたし。





ごめんなさい。ちゃんとメモします。



滴定曲線

化学基礎の教科書には滴定てきてい 曲線きょくせんが3つほど出てくると思います。僕の使ってる教科書がそうです。
よくみてみると,中和点が $7$ だったり酸性側だったり塩基性側だったりしてます。
中和=酸と塩基の互いの性質を打ち消し合う だから,中性にならないの?」と初めは思うかもしれません。
「じゃあどうやって見分けるんだべ?(北日本方言風)」
こう見分けましょう!

準備-1 酸と塩基の強弱

酸や塩基には強弱があります。身近な例で言えば、酢酸(お酢)と塩酸ですね。その違いは水溶液中で電離している割合です。

酢酸は,水溶液中では全酢酸分子($\mathrm{\mathsf{CH_3COOH}}$)の $\dfrac{\,59\,}{60}$ がそのまま $\mathrm{\mathsf{CH_3COOH}}$ として存在し,$\dfrac{\,1\,}{\,60\,}$ だけ $\mathrm{\mathsf{CH_3COO^-}}$ と $\mathrm{\mathsf{H^+}}$ に電離します。

それに対し塩酸は,水溶液中でほぼ完全に $\mathrm{H^+}$ と $\mathrm{Cl^-}$ に電離します。

このように,酸(塩基)によって水溶液中で電離している割合が違います。この電離している割合を 電離度($\boldsymbol{\alpha}$) といい,$0< \alpha \leq 1$ の数値で表します。


そして,電離度がほぼ $1$ の値を表す酸(塩基)を 強酸(強塩基),$1$ よりずっと小さな値を表す酸(塩基)を 弱酸(弱塩基)と言います。


どの酸や塩基が強酸(強塩基) or 弱酸(弱塩基)に分類する方法として,僕が知っている語呂合わせがあります。

その塩馬鹿かな



硫酸 $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{H_2SO_4}}}$
  $\mathrm{H_2SO_4~ \longrightarrow~2H^+~+~SO_4{}^{2-}}$


硝酸 $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{HNO_3}}} $
  $\mathrm{HNO_3~ \longrightarrow~H^+~+~NO_3{}^{-}}$


塩化水素 $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{HCl}}} $
  $\mathrm{HCl~ \longrightarrow~H^+~+~Cl^{-}}$


水酸化バリウム $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{Ba(OH)_2}}} $
  $\mathrm{Ba(OH)_2~ \longrightarrow~Ba^{2+}~+~2OH^{-}}$


鹿 水酸化カルシウム $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{Ca(OH)_2}}} $
  $\mathrm{Ca(OH)_2~ \longrightarrow~Ca^{2+}~+~2OH^{-}}$


水酸化カリウム $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{KOH}}} $
  $\mathrm{KOH~ \longrightarrow~K^+~+~OH^{-}}$


水酸化ナトリウム $\boldsymbol{\mathrm{\mathsf{NaOH}}} $
  $\mathrm{NaOH~ \longrightarrow~Na^+~+~OH^{-}}$


これは強酸/強塩基の代表的な例です。

準備-2 正塩の水溶液の性質

正塩せいえん とは,酸の $\mathrm{\mathsf{H}} $ も塩基の $\mathrm{\mathsf{OH}} $ も残っていない塩のことです。

【正塩の例】
・塩化ナトリウム $\mathrm{\mathsf{NaCl}} $
・塩化アンモニウム $\mathrm{\mathsf{NH_4Cl}}$
・酢酸ナトリウム $\mathrm{\mathsf{CH_3COONa}}$
硫酸銅(Ⅱ) $\mathrm{\mathsf{CuSO_4}}$

例えば,塩化ナトリウム $\mathrm{NaCl}$ と酢酸ナトリウム $\mathrm{CH_3COONa}$ は共に正塩ですが,水に溶かすと塩化ナトリウム $\mathrm{NaCl}$ は 中性 を,酢酸ナトリウム $\mathrm{CH_3COONa}$ は 塩基性 を示します。
この違いは,その塩をつくる酸や塩基の強弱 によって決まります。

強酸+強塩基

強酸:塩化水素(塩酸)$\mathrm{HCl}$ に強塩基:塩化ナトリウム $\mathrm{NaOH}$ を加えると,正塩 $\mathrm{NaCl}$ が出来ます。この正塩の水溶液は,中性 です。

つまり,酸+塩基=中性 です。

弱酸+強塩基

弱酸:酢酸 $\mathrm{CH_3COOH}$ に強塩基:塩化ナトリウム $\mathrm{NaOH}$ を加えると,正塩 $\mathrm{CH_3COONa}$ が出来ます。この正塩の水溶液は,塩基性 です。

つまり,酸+塩基=塩基性 です。

強酸+弱塩基

強酸:塩化水素(塩酸)$\mathrm{HCl}$ に弱塩基:アンモニア $\mathrm{NH_3}$ を加えると,正塩 $\mathrm{NH_4Cl}$ が出来ます。この正塩の水溶液は,酸性 です。

つまり,酸+塩基=酸性 です。


このようになります。

弱酸+弱塩基の正塩の水溶液は,弱酸と弱塩基の種類によって酸性,中性,塩基性のどれにもなり得ますが,多くは中性に近くなります。

本 題

なぜ,中和点の $\mathrm{pH}$ は必ずしも $7$ ではないのか,それは滴定に使用している酸や塩基に理由があります。

強酸-強塩基の滴定曲線を見てみます。 これは,塩酸に水酸化ナトリウムを滴下して滴定している時の滴定曲線です。

中和してできる塩 $\mathrm{NaCl}$ が液に溶けているのですが,強酸+強塩基でできる正塩の水溶液は 中性 なので,中和点は $\mathrm{pH}=7$ になります。


弱酸-強塩基の滴定曲線を見てみます。 これは,酢酸に水酸化ナトリウムを滴下して滴定している時の滴定曲線です。

中和してできる塩 $\mathrm{CH_3COONa}$ が液に溶けているのですが,弱酸+強塩基でできる正塩の水溶液は 塩基性 なので,中和点の pH は塩基性側に偏ります。


強酸-弱塩基の滴定曲線を見てみます。 これは,アンモニア水に塩酸を滴下して滴定している時の滴定曲線です。

中和してできる塩 $\mathrm{NH_4Cl}$ が液に溶けているのですが,強酸+弱塩基でできる正塩の水溶液は 酸性 なので,中和点の pH は酸性側に偏ります。


以上,中和点の pH が必ずしも 7 になるとは限らない理由でした。

画像引用元

竹内敬人『改訂 化学基礎』(東京書籍,H28 年検定/R3 年発行)148 頁